環境目標と情報開示
ANAグループの環境目標
「2030年 中期環境目標」と「2050年 長期環境目標」

これらの目標の実現に向けて、ANAグループでは、運航上の改善、航空機等の技術革新、Sustainable Aviation Fuel(SAF)の活用を組み合わせながら、航空輸送事業の低排出化を進めています。
2021年度には、SAFを活用した新たな取り組みとして「SAF Flight Initiative: For the Next Generation」を開始しました。また、ボーイング777型機へのAeroSHARKの導入を進めるとともに、機材戦略の一環として低燃費機材の比率を高めています。
ANAグループは、2050年ネットゼロCO2排出目標の実現に向けて、排出権取引制度の活用やネガティブエミッション技術(NETs)の活用など、複数の戦略的アプローチを組み合わせて取り組みを進めています。また、Direct Air Capture(DAC)などの技術を通じて、SAFの活用等だけでは削減しきれないCO2への対応を進めています。
2022年3月には、DACに取り組むクライムワークス社と高品質かつ永久的なCO2除去技術の導入検討に関する基本合意書(MoU)を締結し、2023年8月には、1PointFive社と航空会社として世界で初めて調達契約を締結しました。ANAグループは、2025年から3年間で合計3万トン以上の炭素除去クレジット(CDR)を調達する予定です。
さらに、ANAグループは2026~2028年度中期経営戦略において、今後5年間で総額2.7兆円の投資を行う方針を公表しており、運航改善とSAFの活用推進を通じて、2050年ネットゼロCO2排出目標の実現を目指しています。
- 新たなテクノロジー等も活用しながら航空輸送事業の脱炭素化への対応をすすめる一方で、データ資産の活用等による収益機会拡大もはかりながら、グループ社員の雇用を守っていきます。そのために、上記の取り組みに加え、航空事業の環境対策に特化した専門組織の立ち上げ、デジタル専門人材養成のための新たな教育の実施、さらには「ANA Future Promise」を通じたお客様とのコミュニケーションや労働組合との対話の強化等も行っています。さらには、脱炭素化のために不可欠なSAFの安定調達に向けて、日本政府の政策策定への働きかけも行っており、「クリーンエネルギー戦略(中間整理)」にも我々の意見が反映されています。
「2030年 中期環境目標」進捗と実績
航空機の運航におけるCO2排出量の削減
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- 目標 2030年度
- 2019年度比
10%以上削減(11,880千トン以下)
(実質) - 2025年度 実績
- 4.4%削減 (12,336千トン)
- 2025年度(8月~3月)の日本貨物航空(NCA)のCO2排出量を含みます。
航空機の運航以外で発生するCO2排出量の削減
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- 目標 2030年度
- 2019年度比33%削減
- 2025年度 実績
- 15.4%削減
資源類の廃棄率の削減(プラスチック・紙など)
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- 目標 2030年度
- 2019年度廃棄量比 70%以上削減
- 2025年度 実績
- 64.2%削減
食品類の廃棄率削減(機内食、国内ラウンジミールなど)
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- 目標 2030年度
- 廃棄率3.8%以下
- 2025年度 実績
- 3.9%
その他環境目標
大気汚染対策
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- 目標
- 航空機(リース機を含む)の全機ICAO排出ガス基準適合 100%
- 実績
- 全機適合
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- 目標
- 低公害車(*)の導入割合 前年比改善
- 実績
- 低公害・低燃費車(*)
グループ全社の自動車全保有数割合 63.6%
(前年:62.2%)
- 燃料電池車(FCV)、電気自動車(EV)、ハイブリッド車(HV)、排ガス規制適合車
騒音対策
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- 目標
- リース機を含め全機ICAO騒音基準チャプター4に適合 100%
- 実績
- 全機適合
生物多様性

- 目標
- 生物多様性の保全促進
- 実績
-
サンゴ保全活動への支援/外来植物防除活動への参加/違法な野生生物の取引撲滅を目的としたセミナーの開催/森林保全活動の取り組み
生物多様性の詳細はこちら
エコ・ファースト認定企業として
ANAは2008年、環境大臣より運輸・航空業界初となる「エコ・ファースト企業」の認定を受けました。現在も同認定企業として、環境大臣へ提出した「エコ・ファーストの約束」に基づき、環境経営を推進しています。
また、ANAホールディングスは、環境省が推進する国民運動「デコ活(脱炭素につながる新しい豊かな暮らしを創る国民運動)」に賛同して「デコ活宣言」を公表するとともに、官民連携プラットフォームである「デコ活応援団」へ参画しています。ANAグループ全体としてステークホルダーと連携し、環境意識の向上および脱炭素社会の実現に向けた取り組みを推進しています。

TCFD提言に沿った情報開示
ANAグループは、2019年3月にTCFD(Task Force on Climate-related Financial Disclosures=気候関連財務情報開示タスクフォース)による提言への賛同を表明し、TCFD提言に沿った情報開示を行っています。引き続き同提言に沿って開示内容の充実に努めてまいります。

ガバナンス
「環境」はANAグループが特定する重要課題の一つであり、気候変動を含む環境課題への対応については、ANAホールディングス株式会社代表取締役社長を総括、ESG経営推進の最高責任者であるチーフESGプロモーションオフィサー(CEPO)を議長とし、当社およびグループ会社の取締役・執行役員、ならびに当社常勤監査役を委員とする「グループ ESG経営推進会議」を設置し、気候変動を含む環境課題にかかわる重要方針や施策についての議論、目標に対する進捗のモニタリングを年4回行っています。また同会議の傘下には、CO2削減策や取り組み、進捗状況を報告、議論する「エコ・ファースト部会」(航空機の運航関連)、「地上エネルギー部会」(航空機以外の地上関連)を設置しています。経営戦略にかかわる重要な環境課題は「グループ経営戦略会議」にて議論、審議し「取締役会」に上程しています。取締役会は、気候変動課題を含むグループ全体の経営方針や目標を定めつつ、当社グループ各社の経営および業務執行を監督する役割を担っています。
ANAグループでは、ESGにかかわる社外有識者の皆様との定期的な対話から、最新の社会要請や関心の変容などをタイムリーに把握、事業や社会におけるインパクトを評価し、経営戦略に取り入れた上で取り組みに反映しています。
グループ各社にESG経営推進の責任者およびグループESG経営推進会議のメンバーとしてESGプロモーションオフィサー(EPO)、組織のESG経営推進の牽引役としてグループ各社・各部署にESGプロモーションリーダー(EPL)を配置し、取締役会、グループ経営戦略会議、グループESG経営推進会議で議論・決議・報告された事項は、EPOならびにEPLとの密接な連携のもとにグループ全体で共有、実践されます。EPLに対しても、年2回のEPL会議を通じて、包括的に情報を共有するとともにグループ各社・各部署における取り組みの促進につなげています。
また、会社の持続的な成長と中長期的な企業価値の向上を実現するために、ESG経営の推進状況を客観的かつ多面的に把握し、「CO2排出量」や「ESG外部評価指標」等を評価指標とし、役員報酬にも反映させています。
詳細は、こちらをご覧ください。
これまで取締役会で上程・報告された気候変動問題に関する事案(例)
- 環境(各種)方針・中長期環境目標の策定、年度実績
- TCFD提言に沿った情報開示
- 2050ネットゼロ実現に向けたトランジション戦略の策定
- 中期経営戦略への気候変動の組み込み
- 気候変動問題への取り組みに関する進捗
戦略
ANAグループでは、気候変動が航空事業に及ぼすリスクと機会の特定、財務インパクトの評価、および対応策の策定を目的として、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)提言に基づくシナリオ分析を実施しました。
本分析では、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)第6次報告書(AR6)およびIEA(国際エネルギー機関)の「2050年ネットゼロシナリオ(NZE)」等の国際的なシナリオを参照し、1.5℃および4℃上昇の各ケース*1を評価しています。また、移行リスクの評価にあたっては、日本政府の2030年度温室効果ガス削減目標(NDC)および関連エネルギー政策を反映しました。評価対象期間は、「ANAグループ中長期環境目標」に合わせ、2030年から2050年までとしています。
本分析により特定したリスクと機会は、グループの経営戦略および環境方針の改定へ適宜統合・反映してまいります。
- *1.
- 4℃シナリオ
現状を上回る温暖化対策をとらないことにより、産業革命時期比で気温が約4℃上昇し、気候変動による「物理的」変化に関するリスクが顕在化するシナリオ - 1.5℃シナリオ
抜本的なシステム移行が達成されることにより、産業革命時期比で気温の上昇が1.5℃未満に留まり、低炭素経済への「移行」に関するリスクが顕在化するシナリオ
- 4℃シナリオ
事業への影響規模の算定手法と中期および長期の財務インパクト
シナリオ分析で財務インパクトを大(年間100億円以上)としているリスクと機会について、中期(2030年度)と長期(2050年度)の単年度の財務インパクトを試算しました。その算定には潜在的リスク・不確実な要素・仮定を含んでいますため、それらの変動により実際の影響度が大きく異なる可能性があり、環境の変化を適時に反映して評価してまいります。
| 種類 | 財務インパクト※2 | 概要 | 算定手法 | ||
|---|---|---|---|---|---|
| 中期 | 長期 | ||||
| 物理的急性リスク | 異常気象の深刻化・増加 | 大 | 大 |
|
陸域における極端な降水の増加に伴う気象事由による欠航での逸失収入額を、2019年度の逸失収入実績に予測されているそうした気象の出現頻度の増加度を反映して算出しています。 ※3※4 |
| 移行リスク | CO2削減に向けた対応 (航空機) SAF新技術クレジット |
大 | 小~大 | 【SAF※5】
|
価格動向の将来予測に基づくSAF価格とジェット燃料(ケロシン)価格の差、そしてトランジション戦略の実現に必要となる燃料調達量に基づいて増加分のコストを算出しています。2050年度のSAF価格はSAFの量産化により低下するものと見られますが、SAF価格とジェット燃料価格の差が残る場合の価格差に燃料調達量を乗じた費用を増加分のコストとして算出しています。 ※6 |
| 算定中 | 【新技術】
|
トランジション戦略に次世代航空機の導入を含みません。電動航空機と水素燃料航空機の社会実装は2030年度以降となることを見込んでいます。導入する場合の財務インパクトを機材価格の見通しを踏まえて改めて算出します。 | |||
| 小~大 | 中~大 | 【クレジット※7】
|
ICAOによるCORSIA適格排出クレジットの価格動向予測(2021-2026)に用いられている年間価格上昇率を適用して得られる2030年度と2050年度の予想価格と、トランジション戦略の排出権取引制度・ネガティブエミッション技術の活用それぞれに必要となる調達量に基づいて増加するコストを算出しています。 ※8 |
||
| 移行機会 | CO2削減に向けた対応 (航空機) 新技術 |
大 | 大 | 【新技術】
|
トランジション戦略の事業規模に基づくCO2排出量のうち、2030年度には運行上の改善と航空機等の技術革新により総排出量の15%削減を、2050年度には同20%削減をそれぞれ計画しています。これら排出量削減使用燃料の削減に置き換えて燃料調達費用の削減規模を算出しています。2050年度のSAF価格にケロシンと同価格から2030年度の価格の幅を持たせています。 ※5※6※10※11 |
- *2. 財務インパクト:
特定したリスクが起こった場合の財務へのインパクトを、「大」「中」「小」の3段階で定性的に評価しています。そのうち「大」と評価しています項目について、それぞれ中期(2030年度)と長期(2050年度)の単年度に見込まれる財務インパクトを区別して算定しています。
大:100億円/年以上、中:10億円/年以上~100億円/年未満、小:10億円/年未満 - *3. オペレーションコストの増加や災害による機体・施設の被害復旧費用の増加を含みません(今後検討予定)。
- *4. 参照:
IPCC第6次報告書Climate Futures, Infographic TS.1, Infographic TS.1 in IPCC, 2021: Technical Summary. In: Climate Change 2021: The Physical Science Basis. Contribution of Working Group I to the Sixth Assessment Report of the Intergovernmental Panel on Climate Change [Chen, D., M. Rojas, B.H. Samset, K. Cobb, A. Diongue Niang, P. Edwards, S. Emori, S.H. Faria, E. Hawkins, P. Hope, P. Huybrechts, M. Meinshausen, S.K. Mustafa, G.-K. Plattner, and A.-M. Tréguier, 2021: Framing, Context, and Methods. InClimate Change 2021: The Physical Science Basis. Contribution of Working Group I to the Sixth Assessment Report of the Intergovernmental Panel on Climate Change[Masson-Delmotte, V., P. Zhai, A. Pirani, S.L. Connors, C. Péan, S. Berger, N. Caud, Y. Chen, L. Goldfarb, M.I. Gomis, M. Huang, K. Leitzell, E. Lonnoy, J.B.R. Matthews, T.K. Maycock, T. Waterfield, O. Yelekçi, R. Yu, and B. Zhou (eds.)]. Cambridge University Press, Cambridge, United Kingdom and New York, NY, USA, pp. 147-286, doi:10.1017/9781009157896.003.] - *5. SAF(Sustainable Aviation Fuel):原材料の生産・収集から燃焼までの過程で、CO2の排出量が少ない持続可能な供給源から製造されるジェット燃料
- *6. SAF価格動向予測に英国政府資料"Sustainable Aviation Fuels Mandate-Consultation-stage Cost Benefit Analysis"(2023)を利用しています。
- *7. クレジット:CO2削減効果を定量的に示し、排出権として取引できる形態にしたもの
- *8. ネガティブエミッション技術でつくられるクレジットの価格をCORSIA適格クレジットの価格と同等と仮定して財務インパクトを算出しています。
- *9. DAC(Direct Air Capture):大気からCO2を直接回収する技術
- *10. 削減を見込む燃油調達費用の算出に2026年度の収支計画に用いる予想為替レート(155円/USD)と予想燃油価格(USD125/bbl)を使用しています。
- *11. CO2排出量を、国際民間航空機関(ICAO)の国際航空におけるカーボンオフセット制度(CORSIA)の排出係数と同じ3.16kg-CO2/kgを用いて算出しています。
排出量実質ゼロへの移行計画(Net-Zero Transition Plan)
ANAグループは、2050年の長期環境目標達成に向けた航空機運航におけるトランジション戦略を掲げており、その実現に向けて着実に推進しています。具体的には、市場の流通状況や経済合理性を総合的に勘案しながら、SAF(持続可能な航空燃料)やカーボンクレジットを戦略的に調達し、活用しています。不確実な外部環境にも柔軟に対応しながらベストミックスを図ることで、2030年度および2050年度の中長期環境目標の達成に向けて取り組んでいます。
また、2025年8月のNCAのANAグループ統合に伴い、「航空運送事業脱炭素化推進計画」の更新を行いました。「運航上の改善・航空機等の技術革新」「SAFの活用」「排出権取引制度の活用」等に関する2030年度・2050年度に向けた定量的な目標を盛り込んで変更申請を行い、2026年6月に国土交通省より認定を受けています。
この長期目標への確実な移行に向けて、2030年度までに国際線・国内線合わせてCO2排出量を2019年度比で実質10%以上削減する中期環境目標を堅持し、収益性の維持と脱炭素化を両立する戦略を推進します。

- 運航改善・航空機等の技術革新
- 各運航段階に合わせた燃料節減の推進
- 国土交通省と連携した航空交通システム革新
- 次世代低炭素機材の導入など
- SAFの活用等航空燃料の低炭素化
- SAF必要量の安定確保
- 国内における生産量拡大、価格低減、サプライチェーンの整備に向けた官民連携および産業間連携の推進
- 「SAF Flight Initiative」の普及
- 排出権取引制度の活用
- CORSIA義務履行に向けたクレジットの確保
- 欧州等におけるETS*1への遵守
- ネガティブエミッション技術の活用
- 大気中のCO2を回収・吸収、貯留・固定化
(例:Direct Air Captureの活用など)
- 大気中のCO2を回収・吸収、貯留・固定化
- *1. ETS(Emission Trading Scheme):割り当てられた排出枠(上限)を超過した場合に市場から排出枠を買い取って相殺する仕組み。
詳細は、こちらをご覧ください。
パリ協定目標との整合宣言
ANAグループのネットゼロ排出量実質ゼロへの移行計画 (Net-Zero Transition Plan)は、パリ協定の1.5℃目標への整合を宣言しています。本計画はScience Based Targets initiative(SBTi)認定目標を基盤とし、ICAO(国際民間航空機関)のネットゼロ目標シナリオとも整合しています。
財務計画
当社グループは、脱炭素社会の実現に向けた取り組みを経営の最重要課題の一つと位置付け、財務計画における将来の予見可能性を高めるため、「価値創造ロードマップ2030」に環境影響に伴う将来コストを反映しています。
設備投資
2025〜2030年度の6年間では設備投資総額3兆円を計画しており、そのうち国際線旅客・貨物事業向けに約50%(約1兆5,000億円)、国内線旅客事業向けに約15%(約4,500億円)を配分します。これらの資本配分が低燃費機材への転換を財務面から支えるものであり、2024年度実績で82.7%に達した低燃費機材比率は、2030年度までに90%まで向上する見通しです(日本貨物航空〈NCA〉保有機材を除く)。2025年度の主な機材導入実績はB787-10を2機、A320neoを5機となりました。また、2025年度末時点で合計143機を発注中(B787-9 30機、B737-8 38機、A321neo 27機、B777-9 18機 等)であり、今後も継続的な低燃費機材への転換を推進します。
環境コスト
2030年度において約300億円の環境コストを見込んでいます。このコストには、CORSIA(国際航空炭素オフセット及び削減制度)や各国ETS(排出量取引制度)への法的対応、および各種規制や自主的な導入に伴うSAF(持続可能な航空燃料)の調達等が含まれており、将来コストを適切に管理し、利益目標の達成と環境対応の両立を目指します。
こうした環境対応を進める一方で、将来の総コストを抑制する施策にも注力します。具体的には、運航上の改善や低燃費機材への更新により、2030年度に約250億円規模の燃油費抑制を目指しています。
Scope別の脱炭素化アプローチ
当社グループは、Scope 1、Scope 2、Scope 3それぞれの脱炭素化を推進します。
【Scope 1】運航上の改善・航空機等の技術革新
自社の直接的なCO2排出量(Scope 1)削減を最優先事項として推進します。具体的には、2030年度末までに低燃費機材の構成比を約90%(NCA除く)まで引き上げる継続的な機材更新に係る設備投資を推進します。これに加え、機体表面の空気抵抗を低減するリブレット加工フィルム「AeroSHARK」の導入や、AIを活用したシステムによる最適ルート選択等により、運航効率を最大化します。
【Scope 1・3】SAFの安定供給・バリューチェーンを通じた排出削減
自社の運航に伴うScope 1排出量の削減と並行し、顧客企業のScope 3(サプライチェーン排出量)削減ニーズに応えます。具体的には、産業間連携「ACT FOR SKY」等を通じた国産SAFの普及を牽引するとともに、法人・個人向けの「SAF Flight Initiative(SFI)」を展開・拡大します。また、機内食製造時に発生する廃食油をリニューアブルディーゼル(RD)原料として有価販売する資源循環モデルの推進を通じ、バリューチェーン全体でのScope 3排出削減に貢献します。
【Scope 1・2】地上部門の脱炭素化(設備・車両)および制度活用
航空機以外の事業活動に伴う直接・間接排出(Scope 1・2)を削減するため、地上部門における脱炭素化を推進します。
1.地上車両のライフサイクル長期化と電動化(Scope 1)
廃棄対象となった既存の軽油仕様の地上車両をEV(電気自動車)へと改造することで、1台あたり年間約2.1トンのCO2排出量を削減するとともに、車両のライフサイクルを約15年延長させ、廃棄物の抑制と脱炭素を両立するモデルを全国の空港拠点へ展開します。
2.自社施設のエネルギー最適化と行動変容(Scope 2)
総合トレーニングセンター「ANA Blue Base」をはじめとする自社施設への太陽光発電設備の設置を進めるとともに、ビルエネルギー管理システム(BEAMS)や省エネ型フライトシミュレーターの導入による運用最適化を図ります。加えて、訓練室のこまめな消灯や、「階段上って SDGs」と題し、ハロウィン・クリスマスなどの季節イベントと連動して階段の踊り場にキャンディ等のご褒美を設置するなど、社員が楽しみながら自発的に階段を利用できる仕掛けを展開。「2 アップ 3 DOWN」運動と組み合わせることで、施設全体でのエネルギー使用量削減を推進します。
【残存排出(Scope 1・3の除去)】ネガティブエミッション技術(NETs)の活用
SAF導入等のあらゆる削減施策を実施した後に残存するCO2排出量を除去し、2050年ネットゼロを確実に達成するための長期的な体制を構築します。具体的には、DAC(Direct Air Capture)を通じてCO2除去・貯留を行う企業とのオフテイク契約や、バイオ炭を用いた炭素除去技術を保有するTerraton社への出資など、永続的炭素除去系クレジット(CDR:Carbon Dioxide Removal)の将来的な活用を見据えた投資を推進します。
社会的影響評価と公正な移行
当社グループは、ネットゼロに向けた移行プロセスが労働者や地域社会に与える社会的影響(リスクと機会)を評価し、公正な移行(Just Transition)を推進しています。
労働者への対応(自律的成長と公正な移行)
脱炭素移行は現場の安全管理や業務構造に変革を迫ります。当社は生じる心理的負荷等の影響を特定し、対話による公正な移行を推進しています。特に運航分野では、乗務員の納得と行動変容を促す教育やダッシュボードを導入し、安全を前提とした着陸後リバース抑制等の「削減の習慣化」を定着させました。一方、供給やインフラに不確実性を伴うGSE電動化は検証フェーズと位置づけ、進捗に合わせて柔軟な教育プログラムを整備し、現場と並走してまいります。
地域社会への対応(サステナブルなツーリズムと地域創生)
脱炭素化に伴う環境コストの増加が、地方路線の維持や地域経済に与える影響を慎重に評価しています。当社の事業は地方の自然・観光資源に強く依存しており、地域の人口減少による観光産業の担い手不足を、地域経済の衰退と航空需要縮小を招く重大なリスクとして評価しています。
これらの地域課題に対する公正な移行の戦略として、保全すべき自然があるものの旅客数が比較的少ない地方空港へ需要を喚起・分散させる「サステナブルなツーリズム」を推進します。具体的には、愛媛県における耕作放棄地を再生してグリーン・ツーリズムや農業体験を推進する「ANA農園プロジェクト」等を通じ、自然環境の再生と地域経済の活性化(地域創生)を両立させるビジネスモデルを展開し、地域社会の持続可能な移行を支援します。

責任ある調達(SAF等の調達における持続可能性)
SAFの調達等においても、環境・人権・ガバナンス(ESG)の観点や、セクター・国固有のリスクを考慮し、「ANAグループサプライヤー行動指針」に則った対応を推進しています。具体的には、気候変動や生物多様性への配慮、不当な労働搾取といった負の社会的影響を排除する方針のもと、サプライヤーへの本指針の提示と確認を行うなど、持続可能な調達に努めています。
持続可能な製品・サービスプログラム
ANAは、「SAF Flight Initiative(SFI)」を、EU再生可能エネルギー指令(EU RED)に準拠し、ISO 14064-3に基づく独立した第三者機関による外部検証(限定的保証)を毎年受けた持続可能な製品として位置づけています。本プログラムは、顧客のScope 3(サプライチェーン排出量)削減に直接的に寄与し、脱炭素コストを社会全体で分担する共創モデルです。
持続可能な製品の定義・認証基準
EU再生可能エネルギー指令(EU RED)への準拠
本プログラムが提供する環境価値については、EU再生可能エネルギー指令(EU RED / Renewable Energy Directive)に準拠しています。
ISO 14064-3 に基づく第三者外部検証
本プログラムを通じたSAF使用に伴うライフサイクルCO2の定量的削減効果、および顧客に提供している「CO2削減効果証明書」の妥当性については、国際的な保証業務基準である「ISO 14064-3」に基づき、独立した第三者認証機関による外部検証(限定的保証)を毎年実施しており、持続可能な製品としての客観性と透明性を担保しています。
SAF Flight Initiative(SFI)の概要と展開状況
ANAは、持続可能な製品である「SAF Flight Initiative(SFI)」を、顧客のScope 3削減に貢献し、脱炭素コストを社会全体で分担する共創モデルと位置づけています。現在、法人向けの「SFIコーポレート」および「SFIカーゴ」を通じて、延べ22の企業・団体に導入されています。

SFIコーポレート・SFIカーゴ(法人向け)
法人向けの「SFIコーポレート」および「SFIカーゴ」では、貨物代理店・荷主双方のニーズに柔軟に対応できる契約形態(二者契約・三者契約)を推進しています。また、地方自治体におけるScope 3対策促進事業等の外部制度とも連携し、サステナブルな航空利用の需要喚起と市場形成を主導しています。
SFIパーソナル・プログラム(個人向け・2026年新設)
グローバル市場で高まる個人の環境保護ニーズを取り込むため、2026年に個人旅客向けプログラム(SFIパーソナル・プログラム)を新設しました。法人需要から個人需要までターゲット層を拡大することで、社会全体での脱炭素コスト負担が実現可能な仕組みへと変革します。
持続可能な製品・サービスの研究開発(R&D)
当社グループは、持続可能な製品・サービスのポートフォリオを拡大・開発するため、競争力強化に直結する以下の研究開発(R&D)へ経営リソースを割り当てています。
CVCを通じた先端脱炭素技術(NETs)へのアクセス
将来的な残存排出物の無効化・中立化(ネガティブエミッション技術)に備え、コーポレートベンチャーキャピタル(CVC)ファンド(未来創造投資事業有限責任組合等)を通じて、バイオ炭を用いた炭素除去技術等の最先端知見を有するTerraton社をはじめとするスタートアップ企業への戦略的な投資・探索を実行しています。環境先端技術へのアーリーアクセスを確保し、中長期的な調達ポートフォリオの拡張に向けた基盤整備を主導しています。
気象AIによる運航最適化(BlueWX)の実装
高精度な乱気流予測システム等の新たなシステムを実装し、不要な迂回飛行を削減することで、燃費効率の向上とCO2排出量削減に寄与するAI技術のR&Dリソースを割り当てています。
販売推進体制と市場基盤の整備
当社グループは、持続可能なプログラム(SFI等)の拡販と環境配慮型プロダクトの提供を事業の収益成長に直結させるため、社内KPIマネジメントおよび外部市場インフラ整備を統合的に推進しています。
SFI販売KPIマネジメント(全社販売目標管理)
脱炭素コストのマネジメントとして、「SAF Flight Initiative(SFI)」の計画的な拡販を推進しています。販売目標を設定し、全社一体となってSFIの普及拡大に取り組んでいます。
市場基盤の構築・産業界エンゲージメント
自社の販売基盤の構築に留まらず、有志団体「ACT FOR SKY」の幹事企業として産業界全体の啓発活動を牽引しています。成田国際空港株式会社やGX推進機構等のパートナーと連携してScope 3削減価値の市場拡大やルール作り(制度設計)に参画することで、SFI拡販のための事業環境(市場インフラ)を整備し、需要喚起に努めています。
リスク管理
リスクマネジメント体制
取締役会で決定された基本方針に則って定められた「ANAグループ・トータルリスクマネジメント規程」 に基づきリスク管理を実施しています。
グループ各社においては、ESGプロモーションオフィサー(EPO)を推進責任者、ESGプロモーションリーダー(EPL)を推進実行者として、リスクマネジメント体制を構築しています。
気候変動に関するリスクについても、重要なリスクと認識しており、トータルリスクマネジメントの仕組みの中で取り扱っています。
ANAグループの主要なリスク
- 「安全」が毀損・阻害されること
- 感染症による影響
- 気候変動問題への対応
- 国際情勢の不安定化
- システム障害の発生
- 情報漏洩
- 人権リスク
- 自然災害の激甚化
- 為替・原油価格・金利等の市況変動
- 競争力の強化や新たな成長に向けた投資
- 人口減少による既存市場の縮小、労働力確保の困難
- 陸上交通機関との競争激化
インターナルカーボンプライシング(ICP)
環境省による「令和4年度インターナルカーボンプライシング(ICP)を用いた投資決定モデル事業」に参加しました。
将来的には、幅広い施策に対し、カテゴライズした複数のICPを設定・運用することで規制対応および目標達成に向けた有用性・実効性の高い運用(投資判断への適用)を目指しています。
インターナルカーボンプライシング活用ガイドライン ~企業の脱炭素投資の推進に向けて~(2022年度版)
ANAホールディングス株式会社・検討事例(107ページ)
その他 気候変動に関する情報開示
CDP(カーボン・ディスクロジャー・プロジェクト)の評価
ANAグループは、事業活動に伴う温室効果ガス(GHG)排出量を省エネ法等の基準に基づき算出し、GHGプロトコルのスコープ1、2、3に分類した上で、第三者保証を取得して透明性の高い開示を行っています。
こうした厳格な情報開示に加え、気候変動に関するガバナンス、経営戦略、および具体的な削減行動が総合的に評価され、ANAグループは2025年12月に発表されたCDP気候変動質問書(CDP2025)において、最高評価である「Aリスト企業」に選定されました。同分野における「Aリスト」選定は、2022年から2025年まで4年連続となります。
CDPは、機関投資家からの要請に基づき、温室効果ガス排出量の開示をはじめ、企業の気候変動等に関する戦略・目標・取り組みを包括的に評価する国際的な非営利団体です。

SBT(Science-Based Targets)
ANAグループの温室効果ガス(GHG)排出削減目標は、科学的根拠に基づく目標として、国際的な環境イニシアチブである「Science Based Targetsイニシアチブ(SBTi)」より、2022年11月にSBT認定を取得しました。アジアの航空会社グループとしてSBT認定を取得したのは、ANAグループが初となります。
ANAグループは、このSBT認定目標をロードマップとし、2050年までの温室効果ガス排出実質ゼロ(2050年ネットゼロ)の達成に向け、引き続き環境経営を通じた中長期的な価値創造を推進します。

2026年7月31日時点
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対象 |
Science-Based targets(目標) |
単位 |
2019年度(基準年)※1 |
2023年度 |
2024年度 |
2025年度 ※2 |
|---|---|---|---|---|---|---|
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航空輸送 |
2019年度を基準に2030年度までにRTK※4あたりのCO2排出量(原単位)を 29%削減(目標値 0.658 kg-CO2/RTK) |
kg-CO2/RTK |
0.926 |
1.009 |
0.985 |
1.003 |
|
航空輸送以外 |
2019年度を基準に2030年度までにCO2排出量を27.5%削減 (目標値 92,780 CO2トン) |
t-CO2 |
127,973 |
96,997 |
101,240 |
105,611 |
- *1: 2025年8月の日本貨物航空(NCA)グループ化に伴い、SBTi基準(NT C27)およびGHGプロトコルの再計算ルールに基づき、2019年度(基準年)のCO2排出量および有償輸送トンキロ(RTK)の実績値にNCAの同等データを追補加算して再計算。
- *2: 2025年度(8月〜3月)のNCAのCO2排出量を含む。
- *3: 航空燃料の生産・輸送から、航空機での使用(燃焼)に至るライフサイクル全体を指す。
- *4: ICAOの国際標準(旅客1名=手荷物込み100kg換算)に基づき算出する、有償輸送重量(トン)×飛行距離(キロメートル)で表される航空輸送量の指標。
